弘法大師像
紀美野町津川の遍照寺本尊で、右手に五鈷杵(ごこしょ)、左手に念珠(ねんじゅ)を持って牀座(しょうざ)に座り、足元に浄瓶(じょうびょう)と沓(くつ)を描く。さらに本図で特徴的な要素として、大師像の上部に仏像の尊格を梵字で示す種子(しゅじ)が表されている。
種子は、向かって右から「アーク」(胎蔵界大日如来)、「バン」(金剛界大日如来)、「キリーク」(千手観音)、「ソ」(弁才天)の4文字で、これは高野山鎮守である丹生高野四所明神(丹生明神・高野明神・気比(けひ)明神・厳島(いつくしま)明神)の各祭神の本地仏に相当する。弘法大師空海の画像において、弘法大師と種子「アーク」「バン」が描かれる事例や、弘法大師と俗体の四所明神が描かれる事例は確認されているが、四所明神の種子を表す中世の作例は、管見の限りでは本図が唯一のようである。
画絹は一副一鋪とし、下部はかつて大きく傷んで補絹・補採が施されている。謹直な描線や生気のある表情などの特徴から、制作時期は南北朝時代にさかのぼるものとみられる。
高野山上を除き、高野山周辺では、画像・彫像ともに中世にさかのぼる弘法大師像の残存事例が少なく、そのなかでは最古の事例といえよう。丹生高野四所明神を梵字で表す特徴的な図像であることも含め、弘法大師画像の展開を考える上で、貴重な情報を提供している。
所在地 紀美野町津川 遍照寺
お問い合わせ 073-489-5910 紀美野町 教育委員会 総務学事課



